タイヤの性能と技術

1. タイヤの転がり抵抗とは?

タイヤは回転すると、進行方向と逆向きに生じる抵抗力が起きます。これを転がり抵抗と言います。

タイヤの転がり抵抗は、①タイヤの変形、②接地摩擦、③空気抵抗の3つの要因から構成されていますが、特に、 ①タイヤの変形 が9割程度の寄与となっています。

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2. 転がり抵抗のイメージ

自転車を例にすると、タイヤの空気が抜けていくと漕ぐペダルはだんだん重くなります。 これは転がり抵抗に影響を与える要素である空気圧が減少し、進行方向とは逆向きのにタイヤの転がり抵抗が増⼤したからです。

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3. 転がり抵抗の発生メカニズム

理想的なバネ(弾性体)は加えた⼒がバネに保存され、バネを解放すれば、加えられた⼒がそのまま戻ってくるため、エネルギーはロスしないことになります。 ⼀⽅、ゴム(粘弾性体)に加えられた⼒は、変形により熱に変換されエネルギーを消費してしまいます。つまり、ゴムを変形させるとエネルギーロスが発生します。

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4. 転がり抵抗の車両燃費への寄与

タイヤが実際の燃費にどのように影響を与えることになるのか試算したデータがあります。一定速度走行時には加速抵抗が減少するため、タイヤの燃費に対する寄与率が最も大きくなるが、一般市街地走行においてもその寄与率が7~10%となっています。

ここで、タイヤの燃費への寄与率を10%と仮定した場合に、転がり抵抗を20%低減したとすれば、自動車の燃費は2%向上することとなります。

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乗用車用タイヤの場合

走行条件 タイヤの燃費への寄与率
一定速度走行 20~25%
モード燃費試験 10~20%
一般市街地走行 7~10%

5. 空気圧と転がり抵抗

空気圧と転がり抵抗の関係を⽰しており、転がり抵抗は空気圧が減少すると急激に増⼤する傾向にあります。

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6. 空気圧管理の重要性

タイヤは充てんされた空気の自然漏えいにより空気圧が徐々に低下します。使用条件等によって差異があり一定ではありませんが、1ヶ月で5%程度低下します。 環境・安全の両面から最低1ヶ月に1度は適正な空気圧を調整・維持して下さい。

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7. 転がり抵抗とウェット制動距離

一般的な転がり抵抗とウェット制動距離の相関関係については、タイヤの転がり抵抗を低減(良く)すれば、濡れた路面での制動距離は伸び(悪化)、つまり背反の傾向にあります。

このため、適正範囲以上に空気圧を上げたり、タイヤの性能についても無闇に転がり抵抗の低減を追い求めることのないようにすることが重要です。

今日では、技術革新によってタイヤのトレッドパターン(みぞの形状)による排水性や、ゴムの材料等によっても性能の向上が可能になってきました。

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