年頭所感 日本自動車タイヤ協会会長 山石 昌孝

一般社団法人 日本自動車タイヤ協会
会長 山石 昌孝

 2024年の年頭に当たり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 2020年に世界的な感染の拡大を見せた新型コロナウイルス感染症への対応は、昨年5月に感染症法上の位置付けが従来の2類相当から5類へと見直されたこともあり、緊急時から平常時におけるものへ移行してきました。この間、人々の移動をともなう活動は大きく回復し、最近の街角では多くの外国人観光客を目にします。実際、訪日外国人旅行者数は単月では2019年の同月比を上回る数字も示しています。この傾向が今後とも続くことを強く願います。

 一方で、一昨年2月の勃発から2年が過ぎようとしているロシアによるウクライナ侵攻の戦火は、未だに終息の兆しが見えません。戦線は膠着し、果てのない消耗戦が続いています。また、イスラム組織ハマスによる昨秋のイスラエル襲撃に端を発して両者間の紛争は激化し、問題の根源的な解決は非常に難しい状況にあります。さらにアメリカと中国の対立は、その根源が経済ではなく覇権を争うとの色彩が濃く、昨年11月の両国首脳による会談を経ても容易に解消するとは思えません。

 こうした世界情勢は全て政治上の問題に起因した出来事です。政治は経済に大きく影響を与え、その在り様を規定します。これまでの世界では、経済活動のグローバルな統合という大きな流れが存在していました。今起きている様々な政治上の出来事が、これまでの経済上の流れを逆転させ、世界がブロック経済化することの可能性に大きな危惧を抱きます。政治的な問題の解決は容易ではありません。それでもなお、困難な隘路を潜り抜け、世界が経済活動の統合という流れに戻ることを期待してやみません。

 どのような世にあっても、人は、その根源的な欲求である「モビリティ」を求めます。自動車はモビリティの主役であり、自動車タイヤはこれを支える最重要な商品の一つです。自動車が社会的、技術的にどのような変革の波に洗われようとも、タイヤのこの位置付けが変わることはありません。同時に、「安全」と「環境」が達成すべき目標であることも変わりません。自動車を利用する人々の生命を守り、同時に製造・利用・リサイクルの過程で生じる環境負荷を極力小さくする、これこそが我々の提供するタイヤが有すべき普遍的な価値です。

 JATMAは、この普遍的な価値を高い次元で実現させることを通し、グローバルなモビリティの発展に貢献していきたいと願っています。2024年においても、山積する課題の解決に向けて着実に歩みを進めていきます。関係する皆様方の変わらぬご支援、ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

以上